おくらのはなし

お蔵の種類

“蔵”と聞くと“倉庫”という印象を持つ人が多いかもしれません。
蔵にも使われ方によって様々な特徴や種類があります。
調査で確認されたものを大きく4つに分類して、その種類をご紹介します。

① 座敷蔵


内部がお座敷になっている蔵です。多くは1階が客間や隠居部屋に、2階が物入として使われていました。上方から伝わったものとされ、最上川舟運がもたらした文化のひとつです。さらに、山形の座敷蔵はひとつひとつがとても大きく、広範囲に存在しています。
蔵は火に強く、火事から家財を守ってくれるため大切なものを入れて置く宝箱のようなものでした。そのためお通しするのも大切なお客さまで、冠婚葬祭などの大切な行事にも使われました。床の間や天井・襖・壁など隅々まで丁寧にしつらえた建て主のこだわりと職人の技巧を感じられます。

② 店蔵

 街道沿いに多く、通りに面して桁側(長手側)を大きく開いたつくりで商売の店舗に使われていた蔵です。見世蔵とも書きます。多くは正面入口は下屋になっていて蔀戸がつき、中に入ると土間からお座敷に繋がります。2階は商談などに使われていたそうです。
 山形の店蔵は明治以降に建てられたものが多く、大正のあたりで模様替えをおこなっているのでしょう、カラフルなタイルなど和洋折衷な雰囲気のものが見られます。
 現在も店舗として使っているものは多くありませんが、町の顔として佇んでいます。

③ 仏間蔵

 仏壇が置かれたお座敷で豪商や地主のお屋敷などにある山形県内でも珍しい蔵です。中山町の柏倉九左衛門家がよく知られていますが、妻側(短手側)間口くらいの大きな仏壇が置かれた仏間はまるでお寺の本堂のようです。神聖な雰囲気が漂っています。
 山形市内では山形まるごと館紅の蔵(旧長谷川家)にありますが、こちらは非公開となっています。

④ 荷蔵

荷物を入れて置く、いわゆる倉庫として使われていた蔵で、他のものと違って特に仕上げせず構造体の柱・壁が表しになっています。
味噌を入れていたら「味噌蔵」、米を入れていたら「米蔵」のように呼ばれ方でなにを入れていたかがわかります。また、北蔵・西蔵など主屋や敷地に対しての方角で呼ばれていました。
なかには七島蔵と呼ばれる蔵があり、むかし畳表を取り扱っていたときに使ってたそうです。畳表の材料である『七島藺』から名付けられた蔵によってかつての生業を伝えるきっかけになっています。

 このほかにも各地方によって様々な蔵があります。
その土地、その家の生業によって使われ方や呼び名があり、現代まで受け継がれたり使われ方の変化で呼び名が変わったりしています。蔵の呼ばれ方ひとつを取っても、その蔵がどんな場所だったのか、ヒントが隠れているような気がしませんか。
 ぜひ名前の由来まで気にしてみると思わぬ発見があるかもしれません。


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