おくらのはなし

お蔵の細部

こんな言葉があります。

“神は細部に宿る”

 建築家ミース・ファン・デル・ローエなど様々な著名人がこの言葉に触れています。
 蔵もそれを体現した最たるもののひとつではないでしょうか。今回は普段目のいかないような細かいところに着目して蔵の見どころを紹介したいと思います。

―襖・障子紙―


 何気なくみている襖や障子も実は厳選されたものが使われています。襖紙は京都・唐長の木版摺りで描かれた唐紙や、沖縄の手織物・芭蕉布など各地の貴重な工芸品が張り付けられています。模様によって「繁栄・長寿・厄除け」などの意味が込められていました。
 障子紙もよく見ると麻の葉などの模様が出るように漉かれているものがあります。

―引手・釘隠し―

 襖や障子を引くときに手を掛ける引手を注視してみたことはありますか。また、釘隠しはその名の通り、建具や長押などに打った釘の頭を隠すために取り付けられた装飾です。エンボス加工で絵柄が入っていたり綺麗な彩色が施されていたり、中には花や香炉などのモチーフに象られているものもあります。亀や鶴など縁起物の動物たちもいました。

―蹴込板―

 床の間の段差になっている前端の横木を床框といいますが、その下の床との間に取り付いている材を蹴込板といいます。覗き込まないとなかなか見えませんが、ここもまた綺麗な造作を見つけることが出来ます。波打つように木を削り木目のおもしろさを生かしたものや花や植物の彫刻など、このようなところにまで職人技が光ります。

―屋 号―

 その家をあらわす称号として屋号・家号があります。提灯や傘などに家紋や屋号がはいっていることがありますが、蔵の中にもこの屋号が散りばめられています。
 屋根瓦や床下換気口の入口、欄間や障子の組子に入っているなどさりげないものから大胆なものまでさまざまです。

探してみるとまだまだいろいろなものがあります。専門的な知識で見るのも大変おもしろいですが、単純に自分だけのお気に入りを見つけるつもりで探検してみてはいかがでしょうか。
町の資料館や飲食店・コミュニティスペースなど利用されている蔵もあるのでぜひ細かいところまで見比べてみてください。


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